2012年12月公開
 
「嘘」のない、本物の音楽を
栗原さんはスマートエデュケーションのすべてのアプリにおける音楽、BGM、効果音の制作をご担当されているということですが、音楽制作における「こだわり」について教えて下さい。 一番大切にしているのは「嘘」のない音楽づくりです。スマートエデュケーションのアプリは単なるゲームではなく「音楽教材」です。楽しく遊びながら、気持ちよく「本物の音」に触れてもらいたいと思っています。
「リズムえほん」や「リズムタップ」にはJ-POPやアニメソングが多く揃っていますが、実はオリジナル音源には本物の楽器では出すことのできない音を機材で作って使用していることが少なくありません。音楽表現という意味ではもちろん悪いことではありませんが、本物のトランペットやバイオリンで出せない音を「教材」として使うというのはできるだけ避けるべきだと思っています。
原曲にそのような音が入っていても、アプリ用の曲では音を省いたり、修正したりしています。耳に害にあるような音も使わないようにしています。
-「本物の音」にこだわっているからこそ、何度でも飽きずに遊べるのかもしれませんね。ブーブー椅子の音も本物の椅子を使って録音しているんですよね?凄くリアルでした。 ブーブー椅子も録音用に買いました(笑)。シンセサイザーで作る方が簡単なのですが、そこはやはり「本物へのこだわり」で、マイクの前で実際に椅子を鳴らしました。どんな音であっても、できる限り「生」の音源を取り込むようにしています。手間はかかりますが、どうせやるんだったら、とことんこだわりたいという思いが強いですね。 -「リズムえほん」も「リズムタップ」も曲の更新頻度がとても高いですよね。質はもちろん量の面でも音楽づくりは大変ではないですか? スマートエデュケーションの音楽アプリの強さは、更新頻度の高さにあると思っています。これだけ短いサイクルで常に新しいコンテンツを提供しているサービスは、他になかなかないのではないでしょうか。
実は当社が担当しているのは音楽だけではなく、「リズムえほん」や「リズムタップ」で画面を流れる譜面の元データも作っています。
毎月12曲というペースで楽曲と譜面データの両方を作成しているので確かに量は多いのかもしれませんが、モバイル端末向けに毎月300曲程度の音楽コンテンツを制作してきたノウハウがあるので、特に問題は感じていません。ただ、このペースでこれだけの音楽を作れる会社というのは他にはないかもしれませんね。
栗原 正明 株式会社ジェイワン代表取締役社長。モバイル業界黎明期から着メロ、着うた、ムービーコンテンツなどの制作に携わり、これまで3万曲以上の楽曲を提供。最近ではソーシャルゲーム向けの音楽コンテンツを制作するなど常に最先端の取り組みを続けている。スマートエデュケーションではすべての音源の制作と音楽アプリの制作監修を担当。二女の父でもある。 こんな子どもでした 外遊びとイタズラが大好きなやんちゃ坊主でした。幼少期からピアノとエレクトーンを習っていましたが、反抗心もあってなかなか好きになれず、剣道に夢中になっていました。小学校6年生でギターを始めてから一気に音楽に目覚め、そこから音楽一筋になりました。でもあこがれの職業は商社マン。父が商社勤務だったので、同じように働きたいと思っていました。
物の楽器の補完ではなく、タブレットだけで音楽的素養が身につくようなサービスを作る
-スマートエデュケーションの音楽アプリの良さはどこにあると思いますか? 音楽市場は年々縮小し、今やとても厳しい状況に陥っています。そんななか、スマートエデュケーションは「スマートデバイス×子ども×音楽教育」という新しい分野で市場を切り拓いていこうとしているので、本当に素晴らしいと思います。
料理に喩えると、良い素材をそのまま出すのではなく「さらに美味しくなるようにしっかり調理して出している」というのがスマートエデュケーションのアプリの良さだと思います。
良い音楽を作って楽曲として提供するというのは他社でもできるかもしれませんが、子どもたちが楽しく音楽に触れながらどんどん興味を深められるようにゲーム性や様々な仕掛けを取り入れているところ、誰もやっていないことに取り組みながら、細かいところまで手を抜かずに仕上げていくというところが、多くの人からの支持につながっているのだと感じています。
「ヒットを出し続けなければいけない」というプレッシャーもあるかもしれませんが、アイディアとクオリティがここまでしっかりと揃っているサービスはまだ少ないと思うので、更に良いもの追求し続けてほしいと思いますし、私自身もぜひ貢献していきたいと思います。
-栗原さんのような音楽のプロが「音楽教育」という視点でしっかりとアプリを監修されているところが、スマートエデュケーションの音楽アプリの強さでもあるように思います。 逆の視点で言うと、スマートエデュケーションには良い意味で「音楽を知らないからこそ」のアイディアが沢山あって、新鮮な気持ちになることも多いです(笑)。特に「リズムタップ」は音楽を経験している人間からは絶対に出てこない発想だと思いました。
企画を初めて見たときはどうやって実現するんだろうと半信半疑な思いでしたが、デモ版を見て仕組みを理解すると「なるほど!」と目から鱗が落ちる思いでした。こんな初心の発想はまず自分にはできないな、と。そして絶対にヒットすると確信しました。
-斬新な発想を栗原さんが音楽的に正しく豊かなものに仕上げる、という最強タッグが組まれている訳ですね(笑) スマートフォンやタブレットによる音楽教育についてはどう思われますか?本物の楽器を学ぶのと同じような感覚で音楽的素養を身につけられるものなのでしょうか? 優等生的な答えは「やはり本物にまさるものはないので、本物の楽器と一緒にアプリを楽しみましょう」となるのかもしれませんが、私自身は全くそう思わないですね。むしろ、タブレットだけでも音楽的素養が身につくようなサービスを作って行くことに大きな意義があると思います。
ひと昔前は一家に一台ピアノがあり自宅でピアノ教室を開いている先生も沢山いましたが、今そのような教室はほとんどありません。子どもが楽器に触れる機会も減っています。一方で、スマートフォンやタブレットは凄まじい勢いで普及しています。
楽器よりもスマートフォンやタブレットを買う優先度が高い時代なので、そのような環境下でも音楽に触れる機会をできるだけ増やしていくことが、音楽教育の使命だと感じています。
アプリだけで本物の音楽を学べるような技術もどんどん生まれてくることが予想されますし、そういったサービスを実現することに意味があると思います。もちろん本物の楽器で学べる人はそれが良いと思いますが、アプリが本物の楽器の補助的立場で終わってしまっていいかというと、そうは全く思わないですね。
-今後挑戦してみたいことは何かありますか? リトミックのアプリを作ってみたいです。リトミックは親子で一緒に楽しめますし、楽器の知識がなくても手軽に始められるので、音楽の裾野を広げられる可能性が大いにあります。今はDVDなどが主流ですが、アプリだったらより低価格でより幅広い楽曲を提供することができるので何か面白いアプリを作れたらいいですね。
「音楽教育」というと子どもばかりが注目を集めがちですが、実は親たちの世代が既に音楽から離れてしまっているのが現実です。親子で一緒に良い音楽に触れ、音楽に興味を持つ人がもっと増えたら業界の活性化にも貢献できると思います。
いつか幼稚園を作りたいという夢も持っています。今、体操に特化した幼稚園などが人気を集めているようですが、音楽教育や芸術教育を得意とする幼稚園があっても面白いと思います。遊具がすべて楽器の形だったり(笑)。 いつか実現できたら最高ですね。
編集後記
アプリ開発の話から最近の音楽教育市場の衰退の話まで、今まで知らなかったお話を色々とお伺いできて大変勉強になりました。
ただ「良い音楽を」というだけではなく幅広い視野で音楽市場をとらえ、「将来のために今、このアプリで何をすべきか」を考えながら音楽制作に携わっていらっしゃる栗原さん。スマートエデュケーションのこだわりを支える本当に大きな存在だと思いました。
これからも強力タッグで沢山の人を音楽好きにする面白いアプリを生み出してくれるのではないか、と楽しみな気持ちになりました。
取材&文:大澤 香織 フリーランスライター。6歳男子+3歳男子の母。これまで塾や幼児教室の講師を経験するなど、「教育」に強い興味あり。絵本大好き&子どもと歌を歌うのが大好きで、家族そろってスマートエデュケーションの知育アプリのファン。
 
 

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