2013年6月25日公開
 
だわったのは、「生きている温かみのある」恐竜を描くこと
-今回、スマートエデュケーションと作品づくりをしようと思われたきっかけは、何だったのでしょうか? 今まで絵本一筋で、アプリの制作は今回が初めてだったのですが、スマートエデュケーションさんから声をかけていただいて、「タブレットならではの表現方法に恐竜を組み合わせると、面白いものができるにちがいない」とチャレンジ精神に火がつきました。
昔から映像がとても好きで、動きのある作品を作ってみたいという気持ちもあったので、作家として新境地を開拓できるのではないかと思いました。
-「さわるきょうりゅうずかん」は、画面をこすって化石を発掘し、さらに骨(化石)から生きた恐竜がよみがえるというコンセプトがすごく面白いですよね。 そうですね。最初にスマートエデュケーションさんからこの企画を聞いた時、絵本作家からは絶対に生まれてこない発想だなと、目からうろこが落ちる思いでした(笑)。
確かに子どもは自分でアクションを起こすということが大好きですし、化石から生きた恐竜がよみがえるというのはとても面白く、タブレットだからこそ表現できるモチーフだと思ったので、すごく気に入りました。
-もともとの絵本作品でも、黒川さんが描かれる恐竜はとてもカラフルな印象があるのですが、タブレットを使うことで、さらに色鮮やかで立体感のある恐竜が生まれたな、と感じています。
そもそも、恐竜の色はどうやって決められているのですか?
恐竜の色を実際に見たことがある人はこの世にはいないので(笑)、本当の姿は誰にもわかりません。
ただ、現在の生物からも想像できるように、どんな生物も警戒色や保護色、繁殖期に自分を目立たせるためのアピール色など、生きていくのに最も都合の良い色や模様をしています。
恐竜も動物としてそのような工夫が当然あったでしょうし、恐竜は鳥類の仲間ですので、視力や色彩感覚にすぐれ、体も非常に艶やかな色彩をしていたと考えられます。
恐竜が生息していた環境や、肉食や草食といった性質を考慮して、あのような色づけをしています。
-なるほど、科学的視点に基づいたうえでの色彩なわけですね。黒川さんが描かれるような色鮮やかな恐竜がたくさんいたと想像すると、とても楽しいですね。
ほかに今回の作品づくりにおいてこだわった点は、何かありますか?
最もこだわったのは、恐竜の皮膚の感じと動きの表現です。皮膚に関しては、実際の生活では闘いの傷や怪我をした跡があったはずなので、そこは是非入れたいと思いました。
また動きの面では、恐竜が想像よりももっと色々な活動をしていた、と感じられるようなものを作りたいという思いがありました。
恐竜だって、食べたらウンチをしますしね(笑)。もちろん実際にティラノサウルスのウンチの化石も見つかっています。70センチもあるウンチの化石には、草食恐竜の骨がたくさん混ざっていて、骨ごとバリバリ食べていたと考えられているのです。
生きている温かみのある恐竜を描くことにこだわったので、「恐竜も人間と同じ地球の仲間なんだ」と感じてもらえたら嬉しいです。

「さわる きょうりゅうずかん」の楽しみ方

アプリ「おやこでスマほん」を、まずは無料ダウンロード。起動すると、中の本棚に「さわる きょうりゅうずかん」がラインナップされています。
黒川みつひろ氏 1954年大阪市生まれ。大阪市立美術研究所で絵を学び、児童向けイラストレーターとして活躍した後、恐竜絵本作家としてデビュー。
古生物研究についても造詣が深く、最新の情報に基づきリアルに描く恐竜イラストは内外から高い評価を集めている。
主な作品に「恐竜の大陸」シリーズ全7巻、「たたかう恐竜たち」シリーズ全10巻(以上、小峰書店)、「恐竜の谷」、「勇者のツノ」(以上、こぐま社)など。
オフィシャルブログ「恐竜だいす記!」
http://blog.goo.ne.jp/jura2007
竜に興味をもつことで、地球や自然に対する優しい気持ちを育んで欲しい
-恐竜がオナラやウンチをするシーンは我が家の息子たちも大好きですが、ただ「面白ければいい」というのではなく、「恐竜がどんな風に生きていたのか」ということにしっかりと向き合っているというところが、この作品の魅力につながっているのですね。 そうですね。とにかく恐竜好きの子どもたちは、絵を描いている人が本当に恐竜を好きで描いているかどうかをひと目で見分けてしまうんです。
子どもだからといって決して侮れませんし、むしろ子ども達の方がはるかに目が肥えているので、そういう子どもたちを納得させ、満足させ、驚かせるためにはどうしたらよいか、ということはすごく考えました。
-作品づくりで苦労したことは、何かありますか? 作品づくりは、とても楽しかったです。一番大変だったのは資料の後片付けですね(笑)。
今回もかなりの量の資料を集めたのですが、毎日発見の連続でした。普段からネットなどで新しい情報には目を光らせているのですが、とにかく世の中恐竜好きの人は本当に多いんだな、と感じています。
ふと「恐竜が子どもたちに人気があるのはなぜだろう?」と考えることがあるのですが、もしかしたら、子どもたちは恐竜を通して、無意識のうちに地球のエネルギーを感じとっているのではないかと思うのです。恐竜好きの子どもたちは、みんなそのような感覚をもっているような気がしています。

恐竜の存在は作りごとではないので、調べれば調べるほど地球の面白さを感じます。恐竜に興味をもつことによって、地球そのものに対しても興味がわき、自然に対する畏敬の念も生まれてくるのではないかと思います。
今回の「さわるきょうりゅうずかん」が普及することによって、恐竜好きの子どもが増えて、自然にも優しい気持ちを持てる子どもも増えていくと嬉しいですね。
-この作品には、子どもたちの「好奇心」や「考える力」を育てたい、という思いがこめられているのですね。 そうですね。忙しく、また便利な世の中なので、大人も子どもも早急に答えを求めてしまいがちな時代だと思います。
ただ、この「さわるきょうりゅうずかん」で遊ぶ子どもたちには「答えをすぐに出さないで」と言いたいですね。コピペ感覚ではなく、「果たして本当はどうなんだろう?」と想像する時間を楽しんで欲しいと思います。 絵本の読み聞かせの会などで、よく子どもたちに「恐竜が滅んだのはなぜだと思う?」と問いかけをするのですが、みんな一斉に「いんせきー!」と答えるんですよね。
どこからかそういう刷り込みがされてしまって、それが唯一の答えだと思ってしまっているんです。もちろんそれが有力な説だとはいわれていますが、それだけでは説明がつかないこともたくさんあるのです。
実は恐竜は100年に1種というペースでゆっくりと種を減らし、絶滅に向かっていったという説も有力で、隕石は最後のとどめであり、隕石が落ちたときには既にかなり種が減っていたとも考えられているのです。100年に1種というとゆっくりとしたペースに見えますが、長く続いた恐竜時代のなかで、環境の変化によって、少しずつまた着実に絶滅に向かっていたわけです。
ふりかえって、今の地球を見てみると100年どころか、数年に1種というペースで絶滅種が出ていますよね。恐竜時代にくらべると、現代は「大絶滅時代」と言ってもいいのかもしれません。
こうやって恐竜のことを深く調べれば調べるほど、自然を大事にしようという気持ちや地球に対する謙虚さのようなものが生まれてくるような気がするのです。
ですから、「さわるきょうりゅうずかん」が単なるエンターテイメントではなく、子どもたちが色々なことに興味をもって、もっと深いところまで掘り下げていくきっかけになるといいな、と思います。
々な考え方があっていい。自分の目で見て、自分の頭で考えることが何よりも大切
-なるほど。「大絶滅時代」は衝撃的ですね。
こうやってお話を伺っていると、親としても、ただなんとなく楽しむだけではなく、子どもに色々なことを問いかけをしながら、親子一緒に考えたり、調べたりする時間をもちたいな、という気持ちになります。
恐竜は地球のことを考えるのにぴったりの素材だと思うので、恐竜をまったく知らない子どもや親御さんでも、この作品を通して、まずは「恐竜って面白い!」と思ってもらえると嬉しいですね。
そこから、色々なことを想像して、知的好奇心を深めるきっかけになれば、と思います。
先程も言いましたが、正解は一つではないので、どんな捉え方をしてもらっても構わないと思います。「作者はこう思って、恐竜にこんな色をつけて、こんなふうに動かしたけど、君はどう思う?」という問いかけをしているつもりです。「書いてあることが全てではない」という視点で作品をみると、とても面白いと思います。
恐竜に興味をもつことで、子どもたちには自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の言葉で話せるようになって欲しいですし、色々な考えを受け入れられる大人になって欲しいな、と思います。
-なるほど。「図鑑にはこう書いてあるけれど、本当はどうだったんだろうね」と考えながら読むと、とても世界が広がりますし、世の中の見方も変わるような気がします。
大切な視点ですね。最後に、今後挑戦してみたいことは何かありますか?
今回初めてタブレット向けの作品を作ってみて、作家としての新たな可能性が広がったような気がしています。
タブレットは子どもたちが実際に絵に触れて遊びながら、主体的にストーリーに関わることができるという点が大きな魅力だと思うので、もし次回作があれば、恐竜同士を実際に闘わせるような作品や、長い絵巻物のようなものに挑戦してみたいな、と思っています。
もちろん絵本の方も、トリケラトプスのシリーズの続編を待っくださっている読者の方が沢山いるので、今までの活動を続けたいと思います。
絵本には絵本の良さがあり、タブレットにはタブレットの良さがあると思うのですが、両方を経験することで、今後の作品づくりにもとても良い効果が生まれるような予感がしています。タブレットの感覚を絵本にも取り入れながら、ちょっと冒険してみたいですね。
色んなチャレンジをしながら、絵本の世界でもタブレットの世界でも、多くの人に楽しんでもらえるようなコンテンツを作りたいと思います。
取材後期
今回、作品制作に関するお話だけではなく、恐竜についても面白いお話を色々と聞くことができ、恐竜好きの息子を持つ恐竜好きの母として、とても楽しい時間となりました。
もちろん恐竜たちの知られざる姿は、この「さわるきょうりゅうずかん」にぎっしりと詰まっています!是非親子一緒に「きょうりゅうずかん」で遊びながら、恐竜に関する新発見や、地球や自然に思いをめぐらせる時間を楽しんでみて下さい。
ちなみに黒川さんは生まれ変わるなら「草食恐竜」派だそうです。お子さんと「生まれ変わったら何の恐竜になりたいか?」という話をするのも面白いかもしれませんね。
取材&文:大澤 香織 フリーランスライター。6歳男子+3歳男子の母。これまで塾や幼児教室の講師を経験するなど、「教育」に強い興味あり。絵本大好き&子どもと歌を歌うのが大好きで、家族そろってスマートエデュケーションの知育アプリのファン。
 
 

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