2013年10月29日公開
「保育のプロ」として、タブレット(iPad)を使った遊びの時間を
いかに有意義なものにするかを考えることが、最も重要。
-現在、iPadをどのような形で取り入れていらっしゃるのでしょうか。 5歳児クラスはおおよそ1週間に1回、文字の練習などの後に「お楽しみ」の時間として導入しています。集中力を要する活動を行った後の息抜きのような位置づけです。遊ぶ時間は30分程度です。
3歳児、4歳児クラスにも導入していますが、使用頻度はもっと少ないです。
-iPadを使用する上で、気をつけられていることは何かありますか? 基本的なこととしては、ダラダラと使用することがないように時間をしっかりとコントロールすること、またiPadに目を近づけすぎないなど、子ども達の姿勢にも注意を払うようにしています。
子ども達にとっては「遊び」感覚ですが、保育士はプロとして、その遊びの時間をいかに有意義なものにするかをしっかりと考えなくてはいけません。

例えば小さな子どもは1度に2つのことはできないので、遊びの指導をするときは「今日はこういうことをするんだよ」というねらいをはっきりと伝えるようにしています。そうすると、子ども達は迷わずスッと集中して楽しむことができるのかな、と思います。

また、遊んだ後には子ども達が自由に発言できる「発表の時間」を設けています。iPadを使って感じたこと、発見したことを自由に表現するというのも大切な活動だと思っています。
ただ漫然と使用するというのではなく、iPadをきっかけに子ども達同士のコミュニケーションが深まるように工夫しています。
-子ども達の様子はいかがですか? iPadを使い始めてから約4か月が経ちますが(※)、子ども達の間のコミュニケーションツールとして非常に役立っていることを実感しています。
※2013年5月から利用開始し、インタビューは2013年9月に行われた。

使い始めの頃はとにかく「触りたい!」という気持ちが強かったので、その気持ちを尊重して、まずは「おやこでリズムえほん」を使って好きなだけ触ってもらう、という活動から始まりました。
楽器の演奏という感じにはなりませんでしたが、「ただ触る」というのもiPadを楽しむ一つの要素だと思うので、「iPadとはどんなものかを知る」という意味でも有意義な時間だったと思います。
しばらくそういう形で遊んでもらった後に、楽譜に合わせて演奏する「おやこでリズムえほんプラス」で遊ぶことにしました。

最近では、「触る」喜びよりもゲームの内容そのものをしっか りと楽しんでいる様子です。「みんなでつなげっと」なども、まだ難しいかなと思ったのですが、段階を踏んで導入していけば問題なく楽しめることがわかりました。
子ども達のなかにも徐々にステップアップしているという感覚があるようで、「もっと難しいことに挑戦してみよう」という気持ちが見られます。達成感や挑戦することの喜び、友達と協力して遊ぶことの面白さを感じられていることが素晴らしいなと思っています。
-先生がiPadを出した瞬間に飛びついたり、お友達同士で取り合ったりという姿が見られなかったのがとても印象的だったのですが、何か特別な指導をされているのでしょうか? 工作をするにしても給食を食べるにしても、「まずは先生のお話を聞いてから」というルールを小さい時から少しずつ習慣づけています。iPadを使用するからといって、特別な指導はしていません。

自分ひとりが自由に使っているiPadに誰かが横から手を出したら、どんな子どもでも怒ってしまうと思うのですが、最初から「iPadはチームで協力して使うものだよ」という導入をしているので、「みんなで仲良く」という気持ちが子ども達のなかにあるんだと思います。
週に1回程度でも継続的に使用しているせいか、意外と子どもたちは落ち着いていますね。
三鍋 明人 コビープリスクールよしかわ園長 1982年生まれ。
養護施設の教育者という両親のもとで育ち、高校生の頃にはボランティアで養護施設の支援に取り組む。高校卒業後、保育士養成の短大に進み、卒業後に株式会社コビーアンドアソシエイツに(http://www.coby.jp/)入社。
コビープリスクールかめいどの園長を経て現職。妻と男の子(2歳/2011年9月生まれ)の3人家族。
ども達の間の「コミュニケーションツール」として、非常に役立っている。
-子ども達に一番人気のあるアプリは何ですか? 今は「みんなでつなげっと」が人気です。遊び始めるとかなり集中していますし、子ども達の会話がとても可愛らしいので、私自身も「みんなでつなげっと」が大好きです。
園ではお店屋さんごっこなど、社会学習につながる遊びをすることもありますが、この「みんなでつなげっと」では街そのものを疑似体験できるので、より大きな視野で社会性を育むことにも役立っているように思います。
保育室ではだいたい4人で1台のiPadを使用するので、全員が同時に触ろうとすると大変なことになってしまうのではないかと最初は心配したのですが、実はそうなるとゲーム自体が動かなくなってしまうんですよね。敢えて口を出さずに見守っていると、子ども達が自分たちでルールを見つけ、話し合いをしながら順番に操作するようになりました。
子ども達のチームワークの良さに驚いています。今はとにかく「人と人をつなげる」ことに一生懸命ですが、「みんなでつなげっと」は組み合わせの正解が一つではないんですよね。次のステップとしてより高い点数の組み合わせを探して点数を競えるようになっていくと、もっと楽しくなるのではないかなと思います。
子ども達がいつそのルールに気づいてくれるか楽しみです(笑)。

-保護者の方からのご意見は何かありますか? iPadを使用していることは“園だより”などでお伝えしていますが、今のところ心配の声や問い合わせなどは頂いておりません。
なかにはこういったツールを使用されることに懸念を感じられる保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、「子ども達の関係性を深めるための一つのツール」として、また「リズム遊びの道具」として使用しているという意図を伝えておりますので、活動についてはしっかりとご理解頂いているのではないかと思っています。
-保育におけるiPad活用にどのような魅力を感じていますか? 大人が細かいことを伝えなくても、子ども達が自ら興味を持って、自然と好奇心を深めたり、難しいことにチャレンジしようと思えるのがiPadを使用する大きな魅力だと思います。
iPadは今後更に普及していくことが予想されますし、近い将来には教育現場に導入されるかもしれません。遊び感覚で最新の技術に触れることで、ITを身近に感じたり、ITに対する興味を高められれば、きっと子ども達の将来にもつながっていくのではないかな、思います。
また、こういったデジタルツールやインターネットを使用する上でのルールやマナーを身につけることも非常に大切だと思います。iPadを使用することで小さい頃からそういったルールに自然に触れていけるというのも利点ではないでしょうか。
あくまで「人」と「人」とのコミュニケーションツールなので、iPadをきっかけに思いやりの気持ちや考える力を育てることができたらいいな、と考えています。
-「こんなアプリがあったらいいな」、「iPadをこんな風に使ってみたいな」と思われることは、何かありますか? 例えばリズム遊びでは、耳で聴いた音楽に合わせて、正しいリズムで演奏するというのが活動の最終目標ですが、現在の「おやこでリズムえほんプラス」では、目で見た音符を頼りに演奏するようになっています。
もう一段ステップを設けて、画面が黒くなって音符が見えない状態でも同じリズムで演奏できるか、ということに挑戦できるようになるといいな、と思います。
また、自分たちだけの「冒険マップ」を作れるようなアプリも面白いかもしれませんね。自分たちの散歩コースを地図で作ったり、ここにこんな鳥がいた、ここにはドジョウがいたというような情報を追加できたりすると面白いと思います。春夏秋冬で情報を変えられたりすると、より楽しめそうですよね。
今は保育室のなかで使っていますが、今後はiPadを外に持って行って、お散歩の時に見つけた生き物を「おやこでスマほん」の図鑑で調べるというような活動もしていけたらいいな、と思っています。
iPad活用には本当に色々な可能性があると思うので、今後、保育現場におけるiPadの使用法について情報交換できるような場も生まれてきたら嬉しいな、と思います。
取材後記
三鍋園長は、「活動についてはまだまだ手探り状態です」とおっしゃっていましたが、「子ども達にとって有意義な時間にしよう」というしっかりとしたポリシーをもって、iPadを使っていらっしゃる様子に感銘を受けました。
iPadを使用する上では、「大人がどうディレクションしていくかが大切だ」という三鍋園長のお考えには、とても強く共感します。
豊かな自然に囲まれた園で、子ども達がiPadを片手に虫や植物を観察する姿なども是非見てみたいなと思いました!
取材&文:大澤 香織 フリーランスライター。6歳男子+3歳男子の母。これまで塾や幼児教室の講師を経験するなど、「教育」に強い興味あり。絵本大好き&子どもと歌を歌うのが大好きで、家族そろってスマートエデュケーションの知育アプリのファン。
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