2012年12月公開
 
ずは北米と韓国での本格展開をめざす
-海外事業の現状について教えて下さい。 日下部:現在、北米と韓国でサービスを本格的に展開するための準備を行っています。
「おやこでリズムえほん」や「おやこでスマほん」などのアプリは、既に英語版を全世界に向けてリリースしていますが、特に北米と韓国のマーケット状況が日本にとてもよく似ていることがわかりました。
非常にポテンシャルが高い市場であることがわかってきたので、まずはこの2つのエリアに向けて、しっかりとサービスを展開していきたいと思っています。
--具体的にはどのようなことをしているのですか? 日下部:韓国については、現在アプリのハングル語版を鋭意開発中です。北米については、既に英語版をリリースしてはいるものの、英訳しただけではユーザーが増えないので、現地にあった形でのプロモーションを進めていこうとしています。
日本ではサービスの立ち上げ以来、非常に良い状況が続いていますが、実は広告宣伝費を一切かけていません。Apple StoreやGoogle Playなどで取り上げてもらったり、特集を組んでもらったりしたことが非常に大きかったのですが、海外市場に関してもこの状況を踏襲していけたらいいな、と思っています。
そのためにはクオリティの高いアプリを作り続けること、そしてApple社やGoogle社としっかりとした関係性を築きながら、その期待に応えていくことがとても大切だと考えています。先日Apple社やGoogle社の本社にも訪問し、担当者の方ともお話をさせて頂いたのですが、期待して頂いているなということを感じました。
-日下部さんと酒井さんは度々アメリカにご出張されているとのことですが、スマートエデュケーションのアプリは現地でどのように評価されているのですか? 日下部:アメリカには既に子ども向けの知育アプリは色々とあって、参考にしたいと思うものも沢山あります。
ただ当社の「スマほん」のように、あれだけ色々と仕掛けのあるコンテンツを、あれだけ高い品質で提供できているものはなかなかないようです。
また音楽系アプリに関しても、「リズムタップ」などのようにしっかりとリズムをとれたり、音階で遊べたりというものはないようですね。競合が多いとはいえ、我々には我々の良さがちゃんとあることを実感しました。

酒井:確かに、アメリカでアプリを紹介すると、”well-polished”という言葉を使ってほめてもらうことが多かったです。「よく磨かれているね」ということなのですが、特に絵や音楽が非常に洗練されていると言われました。
本物にこだわっているということはすぐに伝わるようで、「これならうちの子にも使わせたい」と言ってもらえることも多く、とても嬉しかったですね。また、ビジネスモデルについてもよく考えられているという評価を色々な方から頂きました。
-マネタイズの部分ですね。日本よりずっと先を進んでいるアメリカでも、子ども向け知育分野でのマネタイズは難しいという印象なのですか? 酒井:そうですね。市場が大きい一方で、マネタイズで上手くいった例というのはあまりないようです。
当社の場合、音楽アプリにしても「スマほん」にしても遊ぶツールは無料で、コンテンツを追加するごとに課金するというサービスプラットフォームの仕組みが上手く整っているのですが、その説明をすると驚かれることが多かったです。
アメリカでは、無料でスタートしてユーザーを増やしても、そこからどう課金していくかでつまずいてしまう、というのがよくあるパターンみたいです。

日下部:現地の投資家の方にお会いしたのですが、会っていきなり「ああ、知育アプリね。アメリカでは3年前にブーム終わっちゃったから」と言われて・・・(笑)。
成功事例がないせいか、最初は全然興味を持ってもらえる感じじゃなかったんですよね。日本よりも1段も2段も高い基準で評価を下されている印象でした。
ただ我々が、海外市場を含めどのようにビジネスを成立させようとしているか、というビジョンと、そのための具体的な手段を一つひとつ丁寧にお話しすると、だんだん前のめりになって、最後には「今までアメリカ人が上手くいかなかったところを実現できるプレイヤーになれるかもね」と言ってもらえました。
「手ごたえあり」という感じで話を終えられたので良かったです。
--なるほど。さすが「シリコンバレーは厳しい!」という感じですね(笑)。 日下部:そうですね。本当にシリコンバレーは「すごい!」の一言でした。日本にいると想像つかないようなハイレベルな闘いが繰り広げられていることを肌で感じて、本当に刺激を受けました。
たった40人の会社が、世界で数百万人のユーザーを抱えるようなゲームを8カ月で4本作っているとか・・・。実力のある人達がしのぎを削って競争している様子を見て、生き残りの厳しさと働く人達のプライドをビシビシ感じました。
こういう話を社内ですると非常に士気が高まって、世界で勝っていくためにはどうしたらいいか、という話で盛り上がり、早速ベトナムラボの設立などが現実になりました。「井の中の蛙」状態にならないためにも、積極的に海外の情報を取り入れていくことは大切ですね。
日下部 祐介 取締役。海外事業/アライアンス担当。 こんな子どもでした 漫画のドラえもんが大好きで、秘密の道具が作れるような科学者になることが夢でした。鬼ごっこや野球、ドッジボールをすることが大好きな活発な子どもでした。 日下部 祐介のプロフィール


酒井 聖子 海外事業/アライアンス担当。一男一女の母。 こんな子どもでした 運動が大好きで将来はスポーツ選手になりたいと思っていました。友達と人形を使ったごっこ遊びをするのが好きでしたが、ペットとかいたずら息子といった脇役を担当することが多かったですね(笑)。幼少期はアメリカで過ごしたのですが、スヌーピーが出てくる“Peanuts”の漫画が大好きでした。 酒井 聖子のプロフィール
本にも海外にも通用する世界観をつくりあげていくことが大切
-そんななかでスマートエデュケーションが成功するには、どのような課題があるとお考えですか? 酒井:サービスのベースの部分は海外でも十分通用すると思っているのですが、コンテンツをいかにローカライズしていくか、つまり、海外の方の考え方や感覚をアプリにどう取り入れていくか、についてはしっかり考えていく必要があると思います。
絵や音というのは、思った以上に文化的な違いが大きいんですよね。世界中で愛されるサービスをつくるためには、絵や音のローカライズはとても無視することはできません。
今のアプリで提供している淡い色合いの可愛らしいイラストは、日本人にとっては非常に安心感があるのですが、アメリカ人に言わせるとちょっと物足りないようです。子ども向けといっても、もう少し立体的でリアルなイラストが好まれます。
3D風のイラストが人気なんですよね。だからと言ってアメリカ人の好みに合わせてしまうと、今度日本人にとっては「リアル過ぎてとても可愛いと思えない・・・」というような感じになってしまいます(笑)。
音についても、ポジティブな印象を与える音とネガティブな印象を与える音は国によって全然違います。

日下部:日本の子どもがどんなものを好むか、ということは良く分かるのですが、それがどの程度海外の感覚とずれているのかについてと把握して、埋めていくことはなかなか難しいな、と思っています。
日本と海外両方に共通して受け入れられるようなテイストを探っているところですね。

酒井:そうですね。外国人イラストレーターの方にもアプリの開発に参画してもらえるよう、積極的に声をかけています。
今はアメリカ、イギリス、ドイツ、インド、インドネシアの方にコンタクトをとって、色々な絵を描いてもらっています。
同じテーマの絵を依頼しても、日本と海外では全く違うものが出てくるので面白いですよ(笑)。

日下部:特に北米で好まれるような立体的なイラストをつくるためには、イラストを描いた後の加工が必要となります。
日本で全てを行うと費用や工数が大分かかってしまうので、ベトナム、インド、インドネシアなどのエンジニアと上手く分業体制を作って、効率よく作品を作っていくことも大切だな、と思っています。
-世界中のクリエイターやエンジニアと共に作品をつくって、その作品を世界中のユーザーに提供できたら素敵ですね。お二人にとって、海外事業の面白さはどんなところにありますか? 酒井:今、色々な国のクリエイターにアプローチしていますが、「子どもに関わる仕事をしたい」、「子どものための絵を描きたい」と思っている人が世界中にこんなにいるのか、とびっくりしています。
子ども向けのサービスというのは、ユーザーだけではなくクリエイターにとっても非常にニーズの強い分野であることを実感しています。それだけ人々の関心の高いテーマに携わることができているというのはとても嬉しいですね。

日下部:「世界」という大きな市場にチャレンジできるというのが一番の面白さだと感じています。ただ、いくら市場が大きくても箸にも棒にもかからない、というのでは挑戦する意味がありません。
これまでの日本や海外での評価を考えても、「勝てそうな試合を一生懸命に戦っている」という気持ちで仕事に取り組むことができるので、とても楽しいです。
その昔世界で一斉風靡した日本の一流メーカーが、今軒並み苦境に立たされています。日本企業の一員として、そこを巻き返したい、という思いもありますね。
世界中で「知育といえばスマートエデュケーション」と思われるような会社を作っていきたいと思います。
-これから面白い事がどんどん起こりそうですね。最後に海外事業における今後の抱負について教えて下さい。 日下部:「海外、海外」と浮足立たずに、しっかりと地に足をつけてビジネスを展開していくことが重要だと思っています。
実はもうアメリカに支社を作ってはいるのですが、まだ社員は駐在していません。アメリカに行く前に日本でできることがまだまだあるからです。
今、世界は確実に狭くなっています。クリックひとつで日本から世界中にサービスを配信することが可能ですし、海外のクリエイターと1度も会わずに仕事を進めることも可能です。
海外展開というのは、海外に支社を作って駐在することがゴールではありません。もちろん勢いもスピードも大切ですが、目的はあくまで事業をしっかりと成功させることです。
その手段として何がベストなのかということを常に冷静に考え、実行に移していきたいと思っています。
編集後記
取材中にインドやインドネシアのイラストレーターさんが描いた作品を見せてもらいました。「ああ、なるほど『神様』を描くとこうなるのか!」と新鮮な発見がありました。
私自身も「世界には色々な国や文化があることを子どもに教えたいな」という思いが強く、家ではよく世界地図や世界の国旗絵本を子どもと一緒に眺めています。
今回お話を伺いながら、日本にいながらも世界のことを知ることができ、海外の子ども達とも気軽に国際交流ができる、そんなアプリが登場したらいいな、と思いました。近い将来、スマートエデュケーションのアプリが世界中の子ども達に笑顔をもたらす日がくることを楽しみにしたいと思います。
取材&文:大澤 香織 フリーランスライター。6歳男子+3歳男子の母。これまで塾や幼児教室の講師を経験するなど、「教育」に強い興味あり。絵本大好き&子どもと歌を歌うのが大好きで、家族そろってスマートエデュケーションの知育アプリのファン。
 
 

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