2014年7月18日公開
 
2014年6月9日から14日にかけて出張した、サンフランシスコ・シリコンバレーについてレポートしたい。

今回の出張目的は、次の2つ。
■Apple HQを訪問し、Gocco事業について共有&ディスカッションすること
■子ども向けアプリの主要なプレイヤーとディスカッションすること

前職からの知り合いもいたが、基本的には私個人のTwitter上での絡みから、「今度SF行くから会おう!」というもの。便利な時代である。
co.labはK12(幼稚園〜高等学校卒業までの13年間)を対象とした教育スタートアップを支援するアクセレレーター。元DeNAのEstebanがExecutive Directorを務めている。
同社の審査を通過したスタートアップは、$25,000〜$50,000の少額出資(わずかながら株を渡すことになる)と、4ヶ月間に渡る各種アドバイス、オフィススペースを受けることができる。卒業生としてはソーシャルラーニングプラットフォームのEdmodo、親の分析に重点を置いた子ども向け教育アプリをつくるKidaptiveといったプレイヤーがいる
左:太田垣、中:Esteban氏、右:同行したアートディレクターの今冨 主に議論したポイントとしては、子ども向けアプリにおけるMonetizationのbest practices、アプリディベロッパーによる相互送客ネットワーク構築に関する相談。課金でうまくいっている例としては、ピザを作るアプリにおいて、Lite版ではマルゲリータは作れるけれど、クワットロ・フォルマッジはPro版じゃないと作れないとか。そんなポイント!?とも思ってしまうが、分かりやすさがそれだけ重要というのは過去のGoccoアプリでの経験からも頷ける。
太田垣 慶 1981年生まれ。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、2006年、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。ソーシャルゲーム事業の立ち上げプロジェクトリーダーなどを経て、2011年よりサンフランシスコをはじめとした世界各地の拠点にて、プロデューサー、ゲームデザインアドバイザーとして活躍。2013年5月にスマートエデュケーションに入社。現在、海外展開を念頭においた知育アプリの新ブランド「Gocco(ごっこ)」の開発責任者を務める。
人気アプリEndless Alphabetなどを提供するディベロッパー。少人数ながらiPad US KidsカテゴリのTop Grossingにおいて3つのアプリがほぼ常にTop 25以内にランクインするほど活躍しているプレイヤー。

CEOであるRex Ishibashiとプロダクトに対するPhilosophyやMonetizationのbest practicesについて主に話をした。印象的だったのは彼の「まずfun/delightありき」というモノづくりに対するスタンスと、父親としての「嬉しい=お金を払いたくなるポイント」という視点をすばらしいバランスで両立している点だ。
アプリ「Endless Alphabet」 たとえばEndless Alphabetというアプリでは、アルファベット一つ一つがキャラになっており、触るとクネクネと動きながらその発音を繰り返しつぶやく。そしてアルファベットを型合わせのように並べると、かわいいアニメーションが流れ、その単語の意味を教えてくれる。その動きは見ているだけで楽しく、子どもはそれだけで何度も遊んでしまうのだが、単語のセレクションにも特徴がある。たとえばbigのように子どもが習う簡単な単語ではなく、あえてjuggleやhilariousといった子どもにはちょっと難しい単語を扱っているのだ。その理由はというと「だって親として子どもが新しい単語を発したり、この単語知ってるよ!と言われたら感動するでしょ!」というもの。
こういったところに、彼らのアプリがengagement→monetizationという両軸において成功を収めている秘訣がある。
「世界の子ども達は、より良質な教育とエンターテイメントを享受できるべきだ。強力で有意義なその両方を1つの体験にして届ける事が、Originatorの目指すところなんだ」。CEOはこう語ってくれた。 当社の新作アプリもデモンストレーション
お会いしたのはApp Storeの教育・キッズ担当という、まさに”the right person”(ふさわしい人物)。Goccoの新作含めた主要アプリをデモしつつ、monetization modelについてあれこれ議論させていただいた。

細かい話は省かせていただくが、非常にクレバーにどういったタイプのアプリにどういった課金モデルがふさわしいかを説明いただき、私としてもこれから向かうべき方向性がクリアになり、非常に有意義であった。

多くのiOSディベロッパーが語っているように、今年2014年のWWDCはかなりディベロッパーフォーカスの内容であり、Kidsアプリという視点でもFamily SharingやApp previews, App bundlesといった非常にありがたい新機能が発表された。

今回のHQ訪問を踏まえ、Goccoアプリについては有料アプリとしてご提供し、これまでのフリーミアムアプリについても同じタイミングで有料アプリに切り替えようと考えている。
カナダはモントリオールのディベロッパー。楽しくかつ学術的にも教育価値のあるゲームを提供することをミッションとしている。

最初のアプリ”Slice Fractions”はAppleによるEditors’ Choiceにも選ばれたヒット作で、ゲームを楽しみながら「分数」を学べるというもの。Ululabはケベック大学モントリオール校とのパートナーシップやCommon Core State Standards(全米共通学力基準)にも準拠するなど、教育学上も価値のあるアプリを開発しており、以前より注目していたプレイヤー。

今回Dust or Magic主催のAppCamp 2014に参加するとの情報をTwitterで見かけ、SFにその期間いるならと声をかけたところ、Cofoundersの1人であるDanyと会うことができた。

Slice FractionsもiOSでは大きく取り上げられたものの、やはりPaidアプリ1つではランキング維持も難しく、またto consumersとto academicのバランスを戦略としてどのように考えていくべきかなど、少し方向性は違えど、比較的新しいプレイヤー同士同じような悩みを抱えており、共感するとともに相互送客などの協力も行っていこうという話になった。
内製で子ども向けアプリを作りつつ、SamsungやSylvan Learningといったパートナーとのネットワークも構築しており、SDK提供を通じて世界中のディベロッパーからアプリを集めているプラットフォーマー。当社はGoccoの2アプリ(Zoo, Fire Truck)をSamsungのKidsTimeに提供しており、今回は状況の確認含めて訪問した。

Platformという別レイヤーのプレイヤーながら、子ども向けタブレットがほとんどうまくいっていない(nabiとLeap Frogくらい?)といった情報含め、子ども向けアプリというビジネスの難しさを共有しつつ、業界全体で力を合わせていかないといけないという話をした。

ちなみに帰国後にSeries Bで$10.85Mの資金調達とのニュースがあり、業界の動きの速さを感じるところである。
6. Toca Bocahttp://tocaboca.com/
子ども向けアプリを作るプレイヤーなら知らない人はいない業界のリーディングカンパニーで、代表アプリは”Toca Hair Salon 2”。2014年5月20日時点で全アプリの累計ダウンロード数はなんと6,700万を超える。

スウェーデンにスタジオを持ち、またUSにも主にマーケティング目的で拠点を持つ。今回はCEOであるBjörnのいるUS拠点を訪れた。WeWorkというコワーキングスペースに入居しており(2014年8月頃にここから引っ越し予定)、建物は古いが趣きがあり、共有スペースは広々としてオシャレな感じ。また、オフィスそのものもコンパクトなスペースでありつつアプリに登場しているキャラのグッズに溢れ、素敵な空間だった。

以前に彼が来日した際に居酒屋で飲んだこともあり(かなりの日本食好き)、今回はカジュアルにお互いのビジネスの状況について話したり、彼らの新作や我々の新作を見せ合ったり、楽しい時間を過ごすことができた。

右がBjörn氏

Björnから日本のユーザーへ

今、この文書を私のPCで作成していますが、その傍らにはドラえもんがいます。“Toca Boca”のストックホルムのオフィスには日本の楽天で購入した「ガシャポン」があり、また我々の最新アプリ“Toca Town”にも「ガチャガチャマシーン」が登場します。我々は日本のゲームカルチャーからその美意識まで、幅広いところからいつも多くのインスピレーションを得ています。お分かりのとおり、我々は日本という国がとっても好きなのです。日本の皆さんも同じように、“Toca Boca”好きになってくれると嬉しいです!
http://tocaboca.com/
7. 最後に
サンフランシスコという土地には前職で2年ほど住んでいたことがあり、その時も感じていたことであるが、「オープンに情報を共有し合う」というカルチャーが当たり前のようにあり、とても居心地がよい。今回は特に「子ども向けアプリ」という、“やり甲斐のありつつビジネスとして、チャレンジングな領域に取り組んでいる者同士”として、その空気をより強く感じることができた。「タブレットを活用する」という文化を共に創っていくことが必要であり、協力は必須である。

また、今回Appleを訪問することもあり、拠点をAirbnbで借りたMountain Viewのアパートをメインにしたこともあり、いわゆるシリコンバレーのスカッとした天気を十分に楽しむことができた。

この出張で得られた(深められた)つながりを大事にしつつ、世界中の子どもにすばらしいプロダクトを届けていきたい。

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